銘器モーリスFT50　アタリ個体

\rMorris TF W-50 78年製　トップ単板 前期型\r\r「できるだけD45に近いジャパンビンテージ」とのご要望\rなかなかに難題でございました\r\r「縦ロゴ」の逸品です\r\r本家D45の「CF」とそっくりにTFと「振り分けた」ロゴ\rマーチンを再現するとのモーリスの意気込みが伺えます\r\r著作権がうるさくなった今では\r再現不能でしょう\r\r70年代に生産されたローズウッドバックD45を強く意識してます\r\r指板のポジションマークはヘキサゴンインレイ\r本物のアバロン貝を使ってます\r\r当時の今Ｄ45のようなVシェイプネック\r高級機の証「ダイアモンド・ボリュート」\rブリッジは黒檀？\r\rT.F Series W-50は1978年～1981年までしか生産されていませんでした\r最初期型はポジションマークがスノウフレークですが\rその後D45と同じ「ヘキサンゴンインレイ」になります\rその中で、70ｓの前期型のみが、「トップ単板」\r大変貴重な、「本気のモーリス」です\r量産機だと言っても、昨今の工房製と互角の仕上がりです\r\rヤマハLシリーズ発表に対抗してのFTモーリス\r日本のアコギ界が拮抗して、もっともしのぎを削っていた時期\r\rオリジナル設計にこだわったヤマハと、マーチンのDNAを持つモーリス\r両社のプライドをかけてぶつかりました\r\r田原良平\r日本のギター作成黎明期の60年台後期の名工です\r全音その他多くのメーカーにこわれて制作指導を行い\r今活動してる、工房系の作家の多くは彼の孫弟子、ひ孫弟子の系譜にあります\r現在、最高峰にあるSUMI工房　鷲見英一氏は、直系の弟子です\r\r田原氏は、マーチン研究家としても高名で、全音のモラレスでは\r同じく研究科のマック保田氏と監修したビックマックモデルを作っております\r\rその田原氏が、モーリスの黎明期に設計作成に関わっております\r68年頃のモーリスのラベルには氏のサインが入ってものもあります\r\r特に000サイズのギターにおいては\r本家マーチンは628ミリミディアムスケールなのですが\r「9割」のメーカーは、当時の主力商品であった\rドレッドタイプの648ミリロングスケールのネックを「兼用」\r000サイズボディに648ネックを組み付けてました\r\r「コスパ対策、制作費圧縮」です\r\rこの悪習は未だに続いておりますが\rモーリスでは、68年の当初から\r000には専用の628ミリネックを使用しております\r\rおそらく、田原氏の\r「オリジナルマーチンと同様の628ミリネック仕様でこそ\r000の音色の軽快さ、操作性の良さが発揮できる」との意向があったのではないでしょうか\r\rマーチンのDNAといえば、キャッツアイですが\rモーリスの中にも生きていて\r満を持して生み出されたのがTFシリーズです\r\rラーメン280円ほどの時代の\r販売価格5万円は今の10万以上の価値があり\rまだふんだんにあった、良材を惜しげもなく使ったTF\r\r W-50は1978年～1981年のみ生産されず\rさらにトップ単板モデルは「前期」のみになったのは\rおそらく当初の仕様が、販売価格を無視して「あまりにもおごりすぎていたから」だと思われます\r\rさて\r\r「音色」はいかがでしょうか？\r\rドンと音の束がホールからほとばしる\r低音と音量を「体感」できます\rボディに接してる膝と胸にビリビリ来ます\r\r一番スゴイと思うのが\r「サスティーン」の長さです、どこまでも伸びていくのですが\r減衰の仕方がなだらかで、静かな単音弾きでは、思わず引き込まれてしまいそうです\r\r音量の大きさ＝豊かさではない\r\r倍音が多く、それが共鳴しあってレゾナンスを生み出してます\rブリッジプレート裏を、ホールから手を入れて感触を確かめました\r1・2弦にあたる部分の消耗は極めて少なく、これが\r本機のサスティーンの驚くほどの良さにつながってるようです\r\rこれは\r他のギターではなかなか経験できません\r一説には\r装飾のためふんだんに散りばめられた貝の象嵌が、鈴鳴り感を加えてくれているとも言われてますね\r\rD45最強説「ゴージャスな音」「キラキラした音」\r奥行き、余韻の正体がそれでしょうか\rお手元に行きましたスリーエスもまた銘器です\r素朴なキレのある、その音色とは対称で\rいわば\rD18とD45との関係のようです\r\r10年前から、普及機のWタイプが目に見えて減ってきました\rさらに数の少ないFTはもちろんです\r値段が急騰してます\r\r同業者の友人のところに、たまたま、ほぼ新品に近いFT50が二本ありまして\r本機と弾き比べましたが、こちらの方が熟成された音でした\r新品澄んだ音、美しいが物足りない\rこちらは、コクがある\r\rだし入りの味噌汁と、味噌だけの味噌汁の違い\rどちらも味噌の味はするのですが、奥行きが違います\r\rこちらのFT50は「アタリ個体」といって、差し支えないでしょう\r\r状態のいいもの、状態がよくてしっかり鳴るもの、そのうえでしっかり鳴るアタリ個体は\r探し当てるのが、年々難しくなってきております\r\rかなり状態の悪いものでも、5万以上の値段がついてます\rいいものにあったら、買っておくことは、よろしいかと思われます\r\r今回はプレイヤーズコンディションです\r\r飾って楽しむのではなく、日々弾いて楽しむ\r実戦の相棒としては、申し分の無い1本です\r\rトップに二箇所ほど、擦れ傷がありますが\r外観には、目立つ大きなキズ、音に影響する損傷はありません\r\rほどよい風格がありながら\r音は熟成されながらも、木部のヘタリは少なく\rその他の部分も、年式を考慮すると、上の部類に入ります\r\rアタリ個体だといっていいと思います\r\rバックはローズウッドにメイプルの３ピースとなってます\rこれもまた、もう今では再現不能、珍しい仕様です\r以前\r3ピースバックのモラレスを出品したところ\rすぐに20代の女性が買いに来て\r「このバックが気に入った、とてもレトロでｶﾜ(・∀・)ｲｲ!!」と言ってました\r\r面白いですね\r\r表板　スプルース単板\rサイド　ローズウッド合板\rバック　ローズウッド合板、メイプル合板\r\rネック ストレート \r弦高　12F　2.3ミリ\rフレット残　7割以上　打ち替えの必要なし\rペグ　作動良好\r\r\r\r\r\r\r\r